天野茂作詞の歌

1  ポケットから手をだしてごらん

ポケットから手をだしてごらん

            天野茂

ポケットから 手をだしてごらん

指が空へ のびてゆくよ

サクラの花びら つまんでみよう

白い花びらがたくさんあるよ


ポケットから 手をだしてごらん

指を組むと 形ができるよ

水中でジャンケン してみよう

プールの水は潜りやすいよ


ポケットから 手をだしてごらん

指を使って 動かせるよ

ドングリでコマを 作ってみよう

たくさんのコマが回っているよ

  

ポケットから 手をだしてごらん

指は手袋で 暖かいよ

シュプール描いて 滑ってみよう

雪の斜面が待っているよ


ポケットから 手をだしてごらん

指が 心をつないでゆくよ

合図のサイン 送ってみよう

友の握手が待ってるよ


2  あなたはどんな時歌いますか

あなたはどんな時歌いますか

            天野茂

あなたはどんな時 歌いますか

ひとりで歌うと 気持ちがなごむ

メロディーが 心の動きをつくる

歌の世界を 楽しんできた


あなたはどんな時 歌いますか

舞台で指揮者に あわせて歌う

リズムが 一体感をつくる

あのときの場面が 心にうかぶ


あなたはどんな時 歌いますか

みんなで歌うと ことばがひびく

伝えたいことばが 共感をよぶ

心に残る 歌と生きていく




3  たんぽぽ たんぽぽ

たんぽぽ たんぽぽ

         天野茂

たんぽぽ たんぽぽ 愛しいひびき

花が集まり 黄色に開く  

花が集まる デパートのよう     

風に乗り 花咲く地から 飛んで来た    


たんぽぽ たんぽぽ 愛しいひびき

種作りで 揃って 花を閉じる

綿毛を作る 工場のよう

風に乗り 花咲く地へ 飛ぶように


たんぽぽ たんぽぽ 愛しいひびき

綿毛が互いに 離れて開く

種が飛び立つ 飛行場のよう

風に乗り 花咲く地へ 飛んでいけ


4  地球家族

地球家族

        天野茂

太陽の光がふりそそぎ

種が土から 芽をだし育つ

光をあびて 作物がみのる

われはいのち育つ 土になりたい


太陽の光がふりそそぎ

光あび プランクトンが育つ

さんごの周りを 魚が泳ぐ

われはいのち暮らす 海になりたい


太陽の光がふりそそぎ

水が空気にとけ 風がはこぶ

森の木間(このま)を鳥がとびまわる

われはいのち守る 空になりたい


太陽の光がふりそそぎ

あなたの声が 聞こえてくる

あなたの顔を 思い出すとき

わが心は 地球家族となる


5  今日しっかりと生き抜くことで

今日しっかりと生きぬくことで

             天野茂

私はALSとともに生きる

呼吸器をつけていのちをつなぐ

今日しっかりと生きぬくことで

先輩方と希望の火をともす


私はALSとともに生きる

からだを動かす支援をうける

今日しっかりと生きぬくことで

介護する人と愛の火をともす


私はALSとともに生きる

録音の声で思いを話す

今日しっかりと生きぬくことで

出会う人と歌声の火をともす


私はALSとともに生きる

メール ブログに生きる日々を書く

今日しっかりと生きぬくことで

まじわるひとと明日の火をともす


6  ひょうたん池

ひょうたん池

         天野茂

ひょうたん池は いきものが集う

赤い金魚が 浮き沈み泳ぐ  

エサを探して パクパク食べる

尾びれをくねらせ 自由に暮らせ   


ひょうたん池は いきものが集う

睡蓮の葉が 浮かんでいる

光をあびて 緑に光る

若葉をひろげて ゆったり暮らせ


ひょうたん池は いきものが集う

小鳥が空から 舞い降りてくる

きょろきょろ見渡し すばやく水のみ

羽をバタバタ 水辺で遊べ


7  ことば

ことば

         天野茂  

ことばは思いを伝える道具

ことばにしないと伝わらない

ことばで思いを伝え合おう

お互いが理解しあえるために

 

ことばを出すことは生きること

人と出会い話し合い生きる

喜び悲しみを感じ合う

あなたと出会い話せてよかった


ことばは知識を広げる泉

新聞テレビが日々伝える

ニュース生活スポーツ芸術

世界を広げて豊かな人生


ことばは時空を越え駆け巡る

パソコンでメールブログを書く

声が出せなくても伝えられる

私は交流を求めて生きる


8  愛のあるくらし

愛のあるくらし

          天野茂

ふるさとは思い出とともにある

友達と遊んで家に帰る

かくれんぼ 部活動 友の家

地域で過ごした愛のあるくらし


ある日ふたりは出会い恋をする

話し合いを重ね意気投合

住居を決めてともに歩む

家庭を築く愛のあるくらし

 

子どもが生まれ親となる喜び

わが子の成長感じて生きる

学校に通わせ先生とともに

子どもを育てる愛のあるくらし


体が不自由で介護を求む 

ふれあいで優しさが生まれる

社会制度の力をかりて

介護する人と愛のあるくらし


9  いのちをつなぐ

いのちをつなぐ

          天野茂

セミは卵からかえり木の下へ

土にもぐり根の汁すい育つ

夏が訪れ木に登り羽化

ミーンとめすを呼びいのちをつなぐ


さけは川の上流でかえる

川を下り広い海で暮らす

急な川を上り生まれた地へ

めすがおすと産卵いのちをつなぐ


米のもみが芽を出す苗づくり

田んぼに植えられ稲が育つ

花粉が風で飛び雌しべが受精

稲穂が実りいのちをつなぐ


人は生まれて二十歳で成人

男女が愛しあい卵が受精

母体の子宮で守られ育つ

オギャーと生まれていのちをつなぐ


10  日本国憲法と歩む

日本国憲法と歩む

         天野茂

だれもが平和な暮らしを望む

政府による 戦争放棄

軍備 交戦権を認めない

憲法九条は 平和の砦


心も体も 自由に生きる

健康で文化的な生活

個人 男女が平等に生きる

基本的人権を 国民は与えられる


国民の声を 政治に活かす

国会議員は 選挙で選ぶ

国会 地方議会 裁判所

権力の暴走 憲法ととめる


学術会議は 学者の国会

功績で推薦 総理が任命

反対意見の人 拒否は違反

学問の自由は これを保障する


学校の授業で 憲法学ぶ

他国に攻め込み 自衛という人

よく見てだまされず 手を結びあって

不断の努力で 憲法と歩む


11  車いすに乗って

車いすに乗って

        天野茂

車いすは 世界を広げる扉

頭を上に 姿勢を保つ

手足を動かし 前後に倒す

車いすに乗って 体を動かす


体が横から縦に 起きる

見る世界は 外へと広がる

庭の花 春夏秋冬を見る

車いすに乗って 自然を眺める


自由に向きを変え 移動できる

外出して自然 人とふれあう

会合 コンサート 作品展

車いすに乗って 世界を広げる


12  いのち生き方の歌

いのち生き方の歌

         天野茂

いのち生き方を 考える時に

先輩方の生き方を 学ぶ

病気の仲間に 思いを寄せて

生きていればいいじゃん 今を生きる


なんとかなるさ おおらかに生きる

死んだらそこまで 後がない

出会い ふれあい 思い出 趣味自然

新しい世界を 迎えて生きる


安楽死が 認められた国では

すべり坂がおき 対象が広がる

難病 障がい者 高齢者へと

同じ轍を踏まず 生きづらさ減らす


誰もが治らない 病気になる

症状に適応する 能力をつける

神経細胞は 可塑性があり使える

しなやかな心で みんなと生きる


13「しげるーむ」でALSと共に生きる


「しげるーむ」で ALSと共に生きる

           天野茂

「しげるーむ」で ALSと共に生きる

うちとけて話し合う 日々のこと

先輩方の経験 知恵 工夫 

家族と相談し合い生きる


「しげるーむ」でヘルパーさんの介護うける

何気ない会話に心がなごむ

あなたの訪問待っています

ヘルパーさんと ふれあい生きる


「しげるーむ」は8畳 日が入る

呼吸器をつけて入浴できる

桜 紅葉 舞うちょうちょ 飛ぶ小鳥

自然の営み 感じて生きる


「しげるーむ」で思い 歌を発信

べっど 車いすで パソコン操作

YouTubeにアップ 歌をとどける

ネットで互いに つながり合い生きる


14  ひょうたん池とキジバト

ひょうたん池とキジバト

            天野茂

ひょうたん池近くに キジバトの巣がある

親バトがあたため エサをあたえる

ひなはひょうたん池を 見て育つ

景色を記憶し巣立ち 一匹で生きる


ひょうたん池は 生き物が集う

キジバトが一匹 舞い降りて来る

水飲み歩き羽を 広げて休む

毎日の訪れ 見て心が和む


ひょうたん池は 生き物が集う

キジバトが二匹 舞い降りて来る

くつろいで羽を 開いて手入れ

くちばし付け合って 求愛し合う


15 小米桜の四季と鳥

 小米桜の四季と鳥

       天野茂

小米桜はひょうたん池そばにある

車いすから季節の変化が見える

春ピンクのつぼみが花開く

庭を彩り春の訪れ告げる


小米桜はひょうたん池そばにある

夏赤い実は鳥が食べ種を運ぶ

秋は落葉冬は枝だけ

寒さの中つぼみ育て春を待つ


小米桜はひょうたん池そばにある

池に舞い降りる中継地点

キジバトひよどりスズメしじゅうから

枝をつかみ季節の池を望む


16 ALSと散歩道

ALSと散歩道

     天野茂

ALS初期の私は 散歩する

時間かけてゆっくり ノソリ ノソリ

でこぼこ遊歩道を 転ばぬように

近くの公園一周り ノソリ


桜の花びら見ながら ノソリ 

セミの鳴き声聞きながら ノソリ

落ち葉枯葉を踏みながら ノソリ

北風に吹かれて ノソリ ノソリ


途中で空いたベンチ 目指して

やれやれ座れる 景色が見える

力を蓄えて さあ出発だ

出会った知人に 挨拶して ノソリ


17 めぐる季節と愛のあるくらし

めぐる季節と愛のあるくらし

         天野茂

日が長く 暖かい 春が来た

桜咲き 卒業の歌が響く

花咲く野に 緑のそよ風がふく

若葉咲き 愛に生き 平和に生きる


雨に濡れて咲く あじさいの花

山小舎に泊まった 友との思い出

海は広く 若者をまねく

広島・長崎と歩む 平和の道


満月をながめ 聞く虫の声

収穫喜ぶ 村祭り

紅葉・落葉は 季節の節目

深まる秋と 愛のあるくらし


雪は招く 山 スキー 温泉

帰省し 兄弟と はずむ話

紅白 除夜の鐘 初日の出 雑煮

新年の願いは 愛のあるくらし

18 富士山のあるくらし

富士山のあるくらし

     天野茂

中学修学旅行で見た

富士山を 卒業作品に描く

大理石に富士を掘り 校門建てる

風雨に耐え 今も生徒迎える


職場で 高い山から登る

八合目で泊まった 満員小屋

ご来光を見て 一歩ずつ登る

薄い空気吸って 噴火口一周


長い桜並木から 富士を見る

広場は遊び場 西に富士を見る

秋は初冠雪 桜の落葉

富士見通り公園は 多摩の故郷



19  ヘルパーさんありがとう

ヘルパーさんありがとう         

        天野茂

私が望むことを 理解する

強くなく 弱くなく 丁度良く

吸引 胃ろう 手足を動かす

あなたの支援を 受けて生きる


私の表情見て 理解する

心のコミュニケーションを 大切に

文字盤 メラ語 目で答える質問

あなたとの会話で 心が和む


私を支援する 広い愛

在宅生活で 詩を書き 歌う

社会 友達と 交流して生きる

私は望む 普通の暮らし


20 新しいALS観で生きる

新しいALS観で生きる

         天野茂

退職し テニス 歌を楽しむ

親指と人さし指の 間がくぼむ

筋電図測る 検査入院

ALSと診断 告知される


今までのALSは どんな病気

三年で呼吸が できずに死ぬ

原因不明 治療法ない病気

告知は各医者の 考え次第


新しいALS観は 告知する

呼吸麻痺は 進行の過程

全経過で 生の拡充 目指す

胃ろう 呼吸器つけ 長く生きる


今の時代に 生まれてよかった

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